-最も安全なダイビングの方法を提案します-


by dirtech

-Doing It Right

DIR-Doing It Right-ダイビングとは:

はじめに

ダイビングを行う環境は多様なので、要求される器材、手順、ダイバーの能力もそれぞれに異なると考えてしまいますが、すべてのダイビングの基本的な原則は共通しています。優れたダイバーであるための3つの基本原則は、良いトレーニング、豊富な経験、そして適切なダイビング器材です。

トレーニング

どのようなダイビングでも、ダイバートレーニングが、優れたダイバーの基礎を築く最初の重要なステップです。質の良いトレーニングでダイビングを始め、さらにダイビング経験を重ねながらスキルを磨き、深い知識を身につけて、優れたダイバーの条件であるための高い見識と判断力が備わるのです。

ダイビングのゴールは、あくまでも徹底的に水中世界を"楽しむ"ことです。しかし、人間は本来水中では生存できません。水中世界を"楽しむ"には、潜水器材の使い方に習熟し、危機を回避をするための十分な技術と知識を身につけ、水中環境に適応できなければなりません。

リスクの高い環境で行われる、沈船へのペネトレーションや洞窟探検、減圧停止が必須の大深度潜水の分野で、急速に進化を遂げているいるテクニカルダイビングも、その目的が同じ"楽しむ"ことである限り、リクレーションダイビングと本質的に何ら異なることはありません。その意味で、テクニカルダイビングの器材や理論、安全へのアプローチには、リクレーショナルダイバーが学ぶことは限りなく多いはずです。

経験

ダイビング経験は、様々なダイビング環境に安全に適応するための重要な条件です。例えば、技量に優れたダイバーでも、40mを超える海底に眠る沈船の内部を安全に探検するには、適切で十分なダイビング経験があることが条件になります。また熱帯の海での経験しかないダイバーが、氷の海をダイビングをするには、全く新しい指導が必要です。

経験は、優れたダイバーに成長するための鍵で、目的にあったトレーニングを基礎に、ダイバーの能力は、様々な水中環境が、ダイバーに多様な条件に適応することを要求する過程で築かれるのです。

器材

頭上閉塞環境下ではもちろんのこと、深度30m以浅のオープンウォーターダイビングでさえも、ナイトロックスを使う混合ガスダイブは、ダイビングの安全性を高めることは明らかです。またロングホース付のセカンドステージを使うことで、強いストレス下のエア切れダイバーのコントロールを容易にすることはすでに広く認められています。

ウイングとバックプレートを組み合わせた浮力コントロール器材を使えば、ダイバーのフォルムを流線形化し、完全なトリムで効率よく推進力を利用でき、安定した潜降/浮上と絶妙な浮力コントロールが可能になります。

DIRダイビングの器材選択の条件は、安易な利便性やファッション性、あるいは旅行のための軽量化ではなく、信頼性の高さと合理的な性能です。

したがって、DIRの考える優れたダイバーとは、質の良いトレーニングを受け、豊富なダイビング経験をもつ、理論的な根拠のある器材を使いこなすダイバーを意味します。

水中世界を徹底的に"楽しむ"ことを目的に、合理的で効率の良い、安全性の高いダイビングを目指す究極のアプローチ、それが"DIR"ダイビングです。

歴史と沿革

北米大陸のフロリダ地方に広く分布する地下水脈への最初のダイビングは、1960年代の末期に始まったと言われますが、スクーバ・ダイビングが一般に普及し始めた1970年代中期頃、フロリダの水中洞穴に興味を持った一部のリクレーショナル・ダイバー達が、ケイブ・ダイビング活動に参加し始めました。

その当時、頭上閉塞で、時には視界がほぼゼロとなるような、しかも浮上時に減圧を伴う厳しい環境でのダイビングに対する体系的教育は未確立でした。しかも安全に洞穴潜水を実施する適切な器材もなく、そしてそのような未知の環境での潜水経験のないダイバーが殆どでした。その為に死亡事故が頻発し、その総数は300名以上に達したと言われます。

このような事態を看過ごせない州政府と国によって、これらの水中洞穴への潜水を規制しようとする動きが起ります。この規制の動きに危機感を抱いたケイブダイバー達が、事故防止の為の教育機関を立ち上げたのが「NACD (National Association of Cave Diving)」や「NSS-CDS (National Speleological Society Cave Diving Section)」等の指導団体でした。

ケイブ・ダイビング指導団体による厳しい認定基準の運用で、洞穴潜水を行なうには一定水準以上のトレーニングや教育や経験が求められるようになり、その結果、水中洞穴内の事故は減少し政府の規制を回避することが出来ました。

ケイブ・ダイビングの先駆者であるシェック・エクスリーの「ブルー・プリント・トゥ・サバイバル (Blue Print to Survival)」は、洞穴潜水に関する過去の事例から事故原因を分析・検証し、その予防と回避方法を考察した最初の著作として有名です。

やがて1985年に、パーカー・ターナーやビル・ホーガン・メインなどが中心となり、フロリダのウッドビル地方のカルスト地形の地下水脈を調査するプロジェクトである「ウッドビル・カルスト・プレイン・プロジェクト (WKPP)」が設立されます。

このプロジェクトでは、過去の事故事例から得た教訓に基づき、徹底した安全管理が追求され、DIR「Doing It Right (正しく合理的な方法で行う)」の最初の概念もそこで生み出されました。

プロジェクト活動を通してビル"ホガース"メインが考案した装備は、現在のテクニカル・ダイビング装備の原型となり、そのためこの装備の形式は、考案者の名前から「ホガーシアン・スタイル」と呼ばれています。

その後の約20年の間に、新しい世代のWKPPのボランティア・ダイバーであるジョージ・アーバイン、アンドリュー・ジョージティス、ジャロッド・ジャブロンスキー等が様々な実験と検証を重ねた結果、DIRメソッドは水中洞穴に類似した環境、すなわち沈船への内部侵入(penetration)やアイス・ダイビング(氷面下ダイビング)等にも多大な影響を与えるようになります。

とくに1990年代中期以降、混合ガス潜水や新しい減圧理論の確立、減圧ソフトウエア、高輝度で長時間照射が可能なHID水中ライト、水中スクーター (DPV‐Diver Population Vehicle)などの新技術が洞穴潜水の安全性を飛躍的に向上させ、ダイバーの活動範囲を拡大しました。

日本では1990年代の中期から、国外のテクニカル・ダイビングやケイブ・ダイビング事情が紹介されはじめました。わが国では洞穴潜水に対する理解や環境が一般的でないことから、DIRダイビング・メソッドは比較的新しい考え方とスタイルのダイビング方法です。

コンセプト

DIRダイビング・メソッドは、単にダイビング器材と装備を指すものではありません。その説明のために以下にDIRダイビング・メソッドのキーワードを含む簡単な説明と、幾つかの代表的な適用例をあげてみましょう。

1. ストリームライン (Streamline-合理性)
-器材は信頼性を優先し、装備が水中での行動を妨げないものを採用してなるべく水の抵抗を受けない器材を選択する。(完全なトリムと浮力コントロール実現するためにバックプレート・ハーネスとバックフロートBCDを採用)
-安全性を前提に、実現可能性が高く効率の良い潜水計画を策定する。
-減圧症と高圧ガス酔い(窒素酔いなど)を排除する目的で、予め標準化した呼吸と減圧混合ガスを使用し、理論上の空気潜水深度を30m以浅に制御する。(トライミックス、多種類の標準減圧ガス)
-水中での呼吸ガス切れなどの緊急時に最も効果的な器材と方法で対処する。(ロングホース・レギュレーター)
-体力の消耗を最小限にする保護スーツと移動手段を採用する。(ドライスーツ、DPV)

2. リダンダンシー (Redundancy-備え)
-呼吸ガスの予備を用意・携行し、故障に備えた代替機能のある呼吸システムを採用する。(遮断バルブ付ダブルタンク、2系統のレギュレーター・システム、レギュレーター付ステージボトルと減圧ボトル、ミニマム・ガスと1/3ルールなどのガス管理の原則)
-視界のない、または不良な環境での照明器材の故障に備えた予備の照明器材の携行。(高輝度の水中主ライトと2つの予備ライト)
-ダイバーは各々が自律してはいるが、必要な場合には相互に補完し機能する。(バディ・システムとチーム・ダイビング)
-複数の予備の潜水計画。(減圧ソフトウエアの活用)

3. ミニマリズム (Minimalism-必要不可欠)
-不要な器材、オーバーサイズ、過重量の装備を排除する。(中性浮力の減圧用アルミタンク)
-能力以上の課題を潜水目的としない。(ソフトウエアで策定する綿密な潜水計画)

4. アウェアネス (Awareness-認識)
-厳密なバディ・システムとチーム・ダイビングの計画と運用。(ガイド・ラインの使用と設置、バディ・ポジションの維持)
-ダイバー間のコミュニケーションを確立し維持する。(高輝度長時間照射ライトの使用)
-健康な生活習慣を確立し維持する。(非喫煙、有酸素運動、食生活)
-精神的な成熟を求め安定させる。(客観的な自己評価、チーム・プレーヤー)

5. ユニファイ (Unify-統合)
-ダイバーの器材装備を統一し標準化する。(緊急時の対応は最小の選択肢で可能)
-安全な範囲の深度に適合した標準呼吸ミックス・ガス、標準減圧ミックス・ガスの採用。(同じ潜水スケジュール、減圧手順で標準化)
-明確なダイバーの役割分担。(バディ・チームとチーム・リーダー、サポート・ダイバー、チーム・プレー)

DIRの未来

DIRダイビングは、ダイビング器材の選択と準備、潜水計画と実施手順はもとより、ダイビング以前の生活習慣、健康管理、考え方までをも含む、ダイビングを最大限に楽しむために、安全に実行し生還するための包括的で普遍的なダイビングの方法論です。

現在、北米、ヨーロッパ、中東、東南アジア、オセアニアなどの一部の地域で、ダイビングの安全度を上げようとする関心の高いダイバーのなかで、シングル・タンクで行う通常のリクレーショナル・ダイビングの限界内であっても、テクニカル・ダイビングからの着想やDIRメソドロジーと同様の考え方とアプローチ、手順と器材を採用するダイバー・グループが出現しています。
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by dirtech | 2007-12-03 19:26 | DIRダイビングとは