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浜の真砂は尽きぬとも世に“まがいもの”の種は尽きまじ‐Part 1

かつていわゆる潜水指導団体で仕事をした経験があり、現在、現役のダイビング・インストラクターとして、またインストラクター・トレーナーとして仕事をしていると、いろいろな方々から連絡を頂戴し、なかには認定コースの内容について相談をいただくことがある。今回は、その中から現役のインストラクターとしては憤慨と落胆せざるを得ないお話を1つ。

小さい頃から水泳を続けてきたAさんは、ずっと憧れていたスクーバ・ダイビングを始めようと思い立ち、今から1年程前にある旅行会社のパンフレットが紹介するダイバー認定コースが受けられる旅行に参加した。

利発で抜群の泳力があるAさんは、コース中に、「こんなの内容でいいのかな」思うことがあった。また同じコースを受けた人たちの中には明らかに「認定されたダイバーとしてダイビングする自信がもてないだろう」と感じたことをAさんは述懐している。

その後Aさんは持ち前の行動力と情報収集力でダイビングを続け、次のトレーニング・プログラムに参加する頃には、自分が受けたオープン・ウォーター・ダイバー・コースはマスターすべきスキルがいくつか省略されていたことに気づく。そして何よりも実際にコースを実施したインストラクターとAさんの認定カードに記載されているインストラクター名が違うという不自然さに疑問を持った。釈然としないままAさんは、認定指導団体から送られてきたそのコースに関する評価アンケートを捨てることができずに机にしまったままにしておいた。

6ヶ月ほど前にAさんがインターネットの情報だけを頼りに、初めて私を訪ねてきてくれた時、Aさんが抱いている疑問をうかがった。Aさんは、しかし、それなりに懸命にコースを担当してくれたX嬢やよくしてくれた他のスタッフへの気遣いから、コース評価アンケートを出すことをかなり悩んでおられた。

伝聞情報だと断った上で、私から著しくコースが不適正に行われている状況を報告することも考えたが、直接当事者から報告されることが最もインパクトがあると判断し、時間をかけてみることにした。

Xさん、そしてXさんにコースを担当するよう指示なさった資格のあるインストラクターの方、もしこの失礼なコラムをご覧になっておられたら、ご心配なく。教え忘れた(?)緊急スイミング・アセントやコンパスの使い方は、私がその後のコースでフォローさせていただきました。そしてAさんは現在、ドロップ・アウトせずにバディ・ダイブを楽しんでいます。

旅行会社の関係者の方々、もしこの失礼なコラムをご覧になっておられたら、どうかお取り扱いになるダイバー認定商品の内容とお任せになるインストラクターが誠実に仕事をする人物かどうかをよく把握なさった上で、ダイバー認定コース付の旅行を販売していただければ、このボヤキ漫才師は納得です。

各認定指導団体のクォリティ・コントロールの責を負う方々、もしこの失礼なコラムをご覧になっておられたら、日々の認定活動の場で何が行われているのかモニターを怠り無く。誠実に現場でインストラクションするインストラクターの声に耳を傾けることを惜しまず、さらに努力を傾注していただきたい。すでに認識いただいているように、赤い帽子を被せれば解決の可能性があがるほど低次元でもなく、単純でない問題があり、解決できないとあきらめればこれからもダイビング事故の数が減ることはないでしょう。

このように憤慨とボヤキを入れながらもダイビングは素晴らしい。この落胆の原因は、ダイビングそのものにあるのではなく、間違いなく認定コースを提供するわれわれインストラクターや事業者側にあるからだ。加えて少なくともこういマーケットの状況の中にあっても、誠実により良いダイビング・インストラクションを提供しようというインストラクターが存在することも私はよく知っているからだ。

そうそう、先日Aさんは、1年前に机にしまったコース評価アンケートを取り出し、受けたコースの内容をありのままに記載して投函した。
by dirtech | 2008-03-01 19:38 | "快刀乱麻"